共通テスト平均点大幅ダウンの本当の原因とは

2022/06/19 ブログ
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【共通テスト平均点大幅ダウンの本当の原因とは】

 

2020年度より実施されている新しい学習指導要領における「予測困難な時代に、未知の問題に対応する能力を育成する」という教育目標のもと、「知識・技能」重視の大学入試センター試験に代わり、2021年度から「知識・技能」に加え「思考力・判断力・表現力」も評価する大学入学共通テストへと変更されました。

 

その第2回目となる2022年度本試験では、数学ⅠAの37.96点を筆頭に、歴代最低の平均点が続出しました。出題形式の変化と問題の難化に対応できない受験生が続出したため、否定的な意見が多く、そのほとんどは問題作成者に対して向けられているようです。


しかし、私が指導した生徒に聞く限り、「そんなにひどい問題ではなかった」という声がほとんどでした。公式をきちんと理解し、解法の過程をていねいに学習してきた生徒にとっては、むしろ当然の質問ばかりでそれほど難問には感じられなかったようです。

 

逆に、公式や問題パターンの暗記といった知識偏重の詰め込み学習ばかりしてきた生徒には「未知の問題」は相当難しかったのでしょう。

 

果たして、今回の共通テストの平均点の大幅な下落は、多くの報道にあるように、出題形式の変化や問題の難化だけが原因なのでしょうか。

 

 

■平均点下落の最大の要因

 

今回の共通テストの問題は、平成29年と30年に計3回行われた試行調査問題に近い内容となっていました。

ちなみに、平成30年に実施された共通テスト試行調査では平均得点率を50%(センター試験は60%)に設定して作問され、数学ⅠAではマーク式問題の平均得点率は34.54%という結果でした。設定より低い結果となった原因については、大学入試センターは次のように分析していました。

 

 ① 高校2年生も参加している(数学ⅠAでは79.6%が高2生だった)

 ② 試行テストの実施が11月と入試本番よりも早い

 ③ 出題形式に慣れていない

 

受験勉強が進み、出題形式への対策もしっかり行った高校3年の1月に同様のテストを受けたなら、想定した50点に近い平均点になると判断していたわけです。

 

言い換えれば、試行調査実施時に出題傾向を分析して正しく対応していれば、決して「未知の問題」ではなかったということです。平均点が下がることと、知識の詰め込みでは通用しないことぐらい簡単に予測できたはずなのです。

 

しかし、試行調査から共通テスト本実施までの間、対応する十分な時間があったにも関わらず、多くの学校や塾・予備校では指導内容をほとんど変えていませんでした。その結果、数学ⅠAでは37.96点という歴代最低の平均点となったわけです。

 

ですから、今回の共通テストの平均点が大幅に下がった最大の要因は、出題形式の変化や問題の難化などではなく、多くの進学校や塾・予備校が、従来通りの詰め込み指導を続けたことで、「思考力・判断力・表現力」の育成を怠ったためだと考えます。

 

 

■詰め込み指導は無くならない


事実、今回の共通テストへの否定的な意見の多くは、問題の変化に対応できなかった人々が、その責任を問題作成者に押し付けているものばかりです。

 

自分たちの指導や学習方法が間違っていたとは認めたくないので、問題が悪い、問題作成者が悪い、と責任を転嫁しているようにも見えます。

 

自らの過ちを素直に認められない人が、改善することはまずないでしょう。そうするべきだと気付くことさえできないでしょう。

 

それでも、自分たちのやり方が正しいと信じて先取りと詰め込みを続けている進学校や進学塾はまだまだたくさんあるわけです。

 

子どもたちの「未知の問題に対応する能力」を育成する側の指導者が、十分予測可能な共通テストの難化にさえ対応できていない。なんとも皮肉な話だとは思いませんか。

 

 

■「思考力・判断力・表現力」とは

 

最近、特に気をつけていただきたいのは、共通テストの難化に乗じて「これからは入試が難しくなるから、塾や予備校で思考力をアップさせよう」というコピーで生徒募集をしている塾や予備校が多いことです。

 

たしかにこれからの入試では「思考力・判断力・表現力」が必要になってきます。それは疑いようのない事実です。しかし、だからといって塾や予備校に通えば「思考力・判断力・表現力」が身につくのかといえば、それは違うと思うのです。

 

なぜなら、最適な解法を先に教えてしまう従来の詰め込み指導では、子どもたちが本来持っている思考力を発揮する機会が奪われてしまう可能性が高いからです。

 

そもそも、今回の教育改革では、従来の行き過ぎた知識偏重の詰め込み指導から脱却するために、「予測困難な時代に、未知の問題に対応する能力を育成する」という目標を掲げています。

 

これからの新しい学力である「思考力・判断力・表現力」とは、未知の問題に対処するために、身につけた「知識・技能」をどのように活用させるかという力です。

 

解決すべき未知の問題に直面した時に、問題の本質を見抜き、身につけた知識や経験を活かして、最もよい解決方法を考える、いわゆる「問題解決能力」を育成しようというものです。

 

そのためには、パターン通りの問題の解き方を暗記するような学習ではなく、問題そのものの本質を見抜いて、解き方の過程を自分で考えていく学習が求められます。これは、数学の問題の解き方の過程を考えることと実によく似ているのです。

 

手前味噌で恐縮ですが、当教室が数学専門の個別指導教室である最大の理由がここにあります。

アルカディア数学教室は、ただ数学・算数の成績を上げるための塾ではありません。「自分の課題を、自分で見つけて、自分の力で解決する」ことを指導理念として、問題の解決方法を自分の力で考えることを通して、子どもたちが将来社会に出たときに必要な「生きる力」を身につけることを目指しています。

 

これからも目先の結果だけを求めることなく、子どもたちの自由な発想と探求心を大切に育み、主体的な学びによって「思考力・判断力・表現力」をはじめとする「生きる力」の育成に努めてまいります。

 

 

 

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